「その1本には理由がある!」〜髪の毛のしくみと脱毛・白髪の話〜
髪の毛の基礎知識
頭髪は通常10~15万本あり、一つの毛孔に2~3本の髪が生えています。そして1日に50~100本の毛が脱落し、新しい髪の毛が繰り返し作られています。毛組織は「毛(毛幹)」と毛を作り支えている「毛包」からなります。毛包下部には毛球部というふくらみがありここで毛は作られています。
毛を作るのにもう一つ重要な場所に立毛筋付着部のバルジ領域があります。ここには皮膚・毛包・皮脂腺など何にでも分化することができる幹細胞が存在しています。なので、このバルジ領域が怪我や炎症などで完全に壊されてしまうと幹細胞も死んでしまい永久脱毛が起きます。
また、バルジ領域に存在する色素を産生する幹細胞が加齢により枯渇すると白髪になるといわれています。軽症の円形脱毛症や短期間の抗がん剤などによる脱毛では、毛球部に炎症や原因があるため一旦毛は脱落しますが、バルジ領域が健在ですのでまた髪が生えてきます。
髪が一旦抜けるとなかなか生えないのはなぜ?

頭に怪我をしたり、大きい吹き出物ができた後に毛が抜けてしまったという経験はないでしょうか。傷が治っても毛が生えるのが遅いと感じることがあります。
どうしてでしょうか。毛の一本一本には毛周期というサイクルがあります。頭髪の毛周期には「成長期」(約5~6年の間毛が成長し続ける時期)、「退行期」(毛が抜け落ち毛包が2~3週間かけて小さくなる時期)、「休止期」(毛包が小さくなったまま約3~4ヶ月間休む時期)をへてまた「成長期」に移行します。
この毛周期があるため、なんらかの理由で髪が脱落した場合、順調にいっても毛包は「退行期」「休止期」をへて発毛するため3~4ヶ月はかかるというわけです。
アホ毛や白髪は抜いても良い!?
いわゆるアホ毛と呼ばれている飛び出した浮き毛や縮れ毛や白髪を抜いています、と時々耳にすることがあります。抜毛を繰り返すとどのようなことが起こるのでしょうか。
Keye*らは、黒色のマウスの毛を8回繰り返し抜いた結果、毛の幹細胞やメラノサイト(色素を産生する細胞)の機能が著しく低下し、抜毛により毛がパサパサになり、細く短くなり、グレーになったと報告しています。これはいわゆる毛の老化の現象とよく似ています。
また、毛は抜き続けるといずれ生えなくなることがわかっています。人は80才までに何回髪は生え変わるでしょうか、毛の成長期を6年とすると、約13回ほど生え変わることになります。
したがって、生理的な脱毛に加えてさらに毛を抜くと髪の老化が進むことが想像できます。質問の答えですが、髪を抜くことは基本お勧めしません。
*Keyes,B.E.et al. : Proc Natl Acad Sci USA 110 : e4950-9, 2013
