知っておきたい帯状疱疹のこと
帯状疱疹は、水疱瘡ウイルス:水痘ウイルス(VZV)による感染症です。VZVは全ての人が感染し皮膚に水疱瘡を発症すると、その部位の感覚神経を上行し、その神経節に一生潜伏しています。我々はVZVに対する免疫を獲得すると、主に細胞性免疫でウイルスを抑制していますが、加齢、様々な疾患、ストレスなどの影響で免疫が低下すると神経節でのVZVの増殖を何度でも許してしまいます。神経節で増殖したウイルスは感覚神経の中を皮膚に向かって移動し、皮膚に帯状に紅斑や水疱を形成します。
その臨床像から病名が帯状疱疹(一般名;おびくさ)と言われます。水疱部位は治癒しても瘢痕となり傷痕が残ります。移動時に神経に傷がつくことで神経痛や感覚鈍麻などを引き起こします。帯状疱疹の発症率は50歳以上で上昇し、日本では80歳までに約3人に1人が、帯状疱疹を経験すると推定されています。
痛みは時間とともに消退することが多いですが、後遺症として痛みや異常感覚が残ってしまう帯状疱疹後神経痛は、痛みの中でも最も痛いものの一つと言われています。また神経の根元で運動神経などへ感染が波及すると顔面神経などの運動麻痺を生じたり、視力障害や聴力低下、排尿・排便障害などを生じることもあります。
このように随伴症や後遺症が恐ろしい帯状疱疹の主因は自らの免疫の低下と言えます。従って発症予防には日頃からストレスを溜めず、働き過ぎに注意し食生活にも気を止めて免疫を保つことが重要です。不幸にも発症した場合、できるだけ早く抗ウイルス剤を摂取することが最も大切です。
加齢によるVZV免疫低下対策として、50歳以降に自己負担でワクチン接種が可能になりました。特に令和7年度から65歳での定期接種に公費負担制度ができました。この機会にぜひワクチン接種をご検討ください。
ワクチンには国産の生ワクチンと外国製の不活化ワクチンがあります。それぞれ長所、短所がありますから、ご自身に合ったものを接種してください。